婚約破棄されたので、好きにすることにした。王城編

「ジーナシス王国では、魔女の条件というものが決められていて、それに当てはまらない者は、魔女と認識しない。魔女は必ず、私と同じ髪色で生まれる。だから、あなたは違うわ」
 カサンドラの髪は、ふたりの異母兄と同じ金髪である。
 自分の髪に両手で触れたカサンドラは激高し、嘘だと繰り返した。
「私は魔女よ。あなたたちの国の条件なんか知らないわ」
「そうね。名乗るのは自由よ」
 カサンドラは、クロエたちの予想よりもずっとわがままで、短気な性格だった。
 エーリヒを餌にしなくても、その言葉だけで逆上して、リーノを攻撃してきた。
「勝手なことばかり言って。私を、誰だと思っているの?」
 カサンドラの感情に呼応するように、会場中に置かれていたグラスが砕け散る。
「私は、魔女よ。今の言葉を訂正しなさい!」
 悲鳴が上がった。
 けれどリーノは動じず、視線を会場中に巡らせる。
 それだけで、グラスはすべて元通りになった。
 人々が驚きの声を上げる中、リーノがクロエに目配せをする。
 クロエも、小さく頷いた。
 順番は変わってしまったが、先にこの爆弾のような王女に退場してもらった方が良いかもしれない。
 カサンドラはしばらく会場中の物を壊して暴れていたが、リーノがすべて直してしまう。
 アダナーニ国王が何度も制したが、まったく言うことを聞かなかった。
 最近のカサンドラは、とても不安定になっている。
 パーティの前日に、アリーシャがそう言っていたことを、クロエは思い出す。
 エーリヒが去ってから癇癪が酷くなっていたが、彼がクロエと婚約してから、それがますます悪化していたらしい。