婚約破棄されたので、好きにすることにした。王城編

 何回か町に泊まり、数日掛けて、ようやくアダナーニ王国の王都に帰還した。
 相変わらず城門は騎士や警備兵によって厳重に守られているが、マードレット公爵家の馬車は止められることもなく、あっさりと城門を抜けて王都に入る。
「馬車の中を確認することもしないのね」
 リーノは驚いていたが、それだけこの国では貴族が大きな力を持っているのだと理解したようだ。
「自然もあるし、町並みも綺麗だけど、どこか殺伐としているわ」
 馬車の窓から外を見つめていたリーノが、そう呟く。
「はい。実はスラムがあったり、移民たちが暴動を起こしたりと、あまり平和ではありません」
 クロエがそう答えると、リーノは納得したように頷いた。
「この国を立て直すのは、大変ね。私でよかったら、いつでも力になるからね」
「ありがとうございます」
 優しい言葉に感動していると、リーノは笑顔でこう言ってくれた。
「縁のある魔女同士で、助け合うのは当然よ」
 大人になったリーノはなかなかきつめの顔立ちだが、笑うととても優しい雰囲気になる。
 やがて馬車は、マードレット公爵邸に到着した。
 クロエはこの家の養女になっているので、侍女らが丁寧に出迎えてくれた。
「お客様がいらっしゃると、伺っておりましたが」
 侍女の問いに、クロエは頷いて背後を振り返る。
「ええ。ジーナシス王国からのお客様です」
 カサンドラのせいで、この国は魔女にあまり良い印象を持っていない。マードレット公爵家の使用人が、それを態度に出すことはないだろうが、リーノが魔女であることは、アリーシャにだけ伝えるつもりだ。
「客間でアリーシャ様がお待ちです」