婚約破棄されたので、好きにすることにした。王城編

 このアダナーニ王国は、魔法後進国である。
 厳密に言うと魔女ではないカサンドラの魔法さえ、あれほど重宝されているくらいだ。
 そこで本物の魔女が誕生したと知ったら、どうなるか。
 クロエの身の安全のためにも、移民出身の魔導師で貫くつもりだ。
「王太子や婚約者にも伝えない?」
「はい。これからどうなるかわかりませんが、今はそうするつもりです」
 ふたりには打ち明けようかとも思ったが、エーリヒに止められた。
 今は王太子とその婚約者だが、彼らはいずれ、この国の国王夫妻になる。
 国際的なことを考え、国の価値を上げるためにも、魔女のクロエを手元に置きたがるかもしれないと言われたのだ。
 クロエが自らの意思で残るのと、向こうから懇願されて断れないのとは、まったく違うと。
「そうね。私もその方が良いと思うわ」
 リーノも、そう同意してくれた。
「逆に私のことは、魔女だと紹介してもらってもいいわ」
「本当ですか?」
 予想外の申し出に、クロエは思わず聞き返す。
「私はジーナシス王国の八番目の魔女よ。アダナーニ王国の国王だって、私に何かを強制することはできないわ。それに、私は王都でやりたいことがあるのよ」
「やりたいこと?」
 リーノは不思議そうに首を傾げるクロエから、エーリヒに視線を移した。
「クロエさんを理不尽に虐げた人たちに、復讐したいとは思わない?」
「できるのか?」
 エーリヒはすぐにそう問いかける。
「ええ。できるわ」
「ま、待って」
 クロエは驚いて、リーノとエーリヒを交互に見つめる。
「復讐なんて、そんな」