婚約破棄されたので、好きにすることにした。王城編

 背後からクロエを抱きしめたまま、動こうとしないエーリヒにそう尋ねると、彼はこくりと頷いた。
「ああ。クロエの魔法があったから、楽勝だったよ。むしろ、ちょっとやり過ぎたかもしれない」
 魔物は大型の海獣で、船をいくつも転覆させていた。
 ギルドの船を見つけて、ひっくり返してやろうと近寄ってきたが、その前にエーリヒが一撃で仕留めていた。
「すごいね」
 指名依頼になるほどの魔物を、一撃で倒すエーリヒの実力に感嘆する。
「クロエの魔法のお陰だ。そっちはどうだった?」
「最初に海を見に行ったの。想像していたような砂浜じゃなかったけれど、広くて感動したわ。それと……」
 屋台をたくさん回ったこと。
 食べきれなかった分は、アイテムボックスに収納したこと。
 お土産もたくさん買ったことを報告する。
「そうか。楽しかったようで何よりだ。実はアリーシャ嬢から、一度帰還してほしいという伝言が、ギルドに届いていた」
 そう言われて、はっとする。
 もともと、サージェ捕縛のために王都を出てきた。
 それが終わって帰還するつもりだったが、エーリヒに指名依頼が入り、それを達成してからということになっていた。
 その指名依頼も、いくつか終わらせている。
 エーリヒの名声も、充分に高まったことだろう。
「そうね。そろそろ王都に戻らなくては」
 いつまでもエーリヒと旅をしていたいと思うが、クロエには果たさなくてはならない使命がある。
 リーノに一度戻らなくてはならないことを伝えると、彼女は納得してくれた。