婚約破棄されたので、好きにすることにした。王城編

 そのことに不安を抱いたアリーシャは、王太子である自分の婚約者を守るために、ジーナシス王国に留学してまで魔法を学んだ。
「留学してみて、いかにこの国が歪んでいるのか、はっきりとわかったわ。だから私たちは、貴族だけが優遇されるこの国を変えたいと思っている。そのためには、ジェスタは王にならなければならない。敵対する相手は、あの魔女だもの。手段を選ぶつもりはなかった。だから、あなたたちをこちらに引き入れた」
 アリーシャの言葉には、覚悟と決意が表れていた。
「でも貴方たちにも、きちんと望む形で幸せになってほしい。そのための協力は惜しまないつもりよ」
 一方的に利用するのではなく、運命をともにする覚悟がある。そう言ってくれたのだ。
 そこまでの覚悟を示してくれたのだから、疑うことはできなかった。
「じゃあ私も、王都の外に出られる?」
 アリーシャを信じると決めたクロエだったが、エーリヒはまだ、警戒を解こうとしない。
 エーリヒは貴族、さらに女性に不信感を持っている。言葉だけでは、そう簡単に信じることはできないのだろう。
 でもこればかりは、ここで問答をして解決するようなことではない。
 だからクロエは、話を逸らすようにそう言った。
「ええ、もちろん。クロエはもう私の義妹で、この国の貴族の一員だもの」
 その意図をくみ取ったのか、アリーシャも笑顔でそう言ってくれた。
 マードレット公爵家の養女になるときに、クロエは一時的に魔法ギルドを脱退している。貴族籍を得て、身分が変わったからだ。