婚約破棄されたので、好きにすることにした。王城編

「わぁ、すごい」
 良い匂いが漂ってきた。
 広い道の両側にはずらりと夜会が並んでいて、人々で賑わっている。
「はぐれないように、手を繋ぎましょう」
 クロエが提案すると、リーノは差し出したクロエの手を、きゅっと握ってきた。
 年上だとわかっていても、その姿は愛らしく見えてしまう。
 ふたりで気になったものはすべて買い、食べきれない分はアイテムボックスにしまうことにした。
 人は多かったが、ふたりに話しかける者も、注意を払う者はいない。リーノが意識を逸らす魔法を使ってくれていたのだろう。
 お陰でトラブルもなく、ゆっくりと屋台を楽しむことができた。
 宿に戻り、少し休んでいると、エーリヒが戻ってきた。
「おかえりなさい。早かったね」
 船で魔物退治に出たので、時間が掛かると思っていた。
 だから予想以上に早く帰ってきてくれたのが嬉しくて、笑顔で迎える。
 きっと魔物退治も成功したのだろう。
「大丈夫だった?」
 そうねぎらいの言葉を掛けようとしたクロエは、エーリヒがクロエを見つめていることに気が付いて、首を傾げる。
「どうしたの?」
「髪が……」
「あっ」
 そう言われて、髪色を戻したままだったことに気が付いた。
「屋台に行くとき、リーノが姉妹に見えるようにって、提案してくれたの。それで、この髪色に」
「そうなのか」
 エーリヒは納得したように頷いた。
 エーリヒにしてみれば、この髪色のクロエのほうが、馴染みがあるのかもしれない。
 まだ騎士見習いだった頃からずっと、このクロエを見てきたのだから。
 そう思ったクロエだったが、エーリヒは困ったように視線を逸らす。