婚約破棄されたので、好きにすることにした。王城編

「移民になったのに、結局貴族に戻ってしまった。それに、この国を変えたいと思っているのに、貴族が優遇される高級宿に泊まったりして……」
 そんなクロエの話を、リーノは真剣に聞いてくれた。
「何も気に病むことはないわ。すべては必然なのよ」
 クロエの手を握って、優しくそう言った。
「必然、ですか?」
「ええ、もちろん。すべてはあなたの使命のためよ。まずあなたの場合、あの家から逃げ出さなければならなかった。そのために、移民に成りすました。でも移民と同じ姿をしたことで、知ったこともたくさんあったと思う」
「はい、ありました。黒髪にならなかったら、この国の状況にあまり関心を持たなかったかもしれません」
 移民の姿をしたクロエだったからこそ、たくさんのことを知り、自分だけ幸せになるのは間違っていると確信することができた。
「ここで『知ること』を達成して、次の段階に進んだだけよ。だって移民のままでは、できることにも限度がある。そこで手に入れたのは、公爵令嬢という身分と、王太子とその婚約者という、強力な味方よ」
 リーノの言うように、どんなにこの国の状況を許せないと思っても、『移民のクロエ』では限度がある。
 いくら魔女でも、人の心の有り様までは変えられない。せいぜい意識を逸らす程度なのは、クロエもよくわかっている。
「そうですね」
 クロエは頷いた。
 すべては、この使命のための必然。