婚約破棄されたので、好きにすることにした。王城編

 もちろんクロエもエーリヒも、自分から問題を起こすことはしない。
 だが、王女のお気に入りであったエーリヒを利用しようと企む者。自分たちの計画の妨げになるから、消してしまおうとしている者は存在する。
 そんな人たちに襲われたら、反撃しないわけにはいかない。
 クロエもまだ、自分の力を自在に使うことはできないが、それでもエーリヒを守るためなら、全力で戦うと決めている。
 もしそうなったとしても、マーガレット公爵家が責任を持つと言ってくれているのだ。
 しかも、相手は貴族だけではない。
 国中から恐れられているカサンドラ王女も、エーリヒに執着している。
 彼女はこの国で唯一の魔女だが、この大陸の最北端にあるジーナシス王国には、数人の魔女がいると聞いた。
 カサンドラの力は、その魔女たちに比べるとかなり弱い。それでも目の前の人間を自由に操ることはできる。
 それにジーナシス王国の魔女たちは、互いに力が暴走しないように制御し合っているが、唯一の魔女であるカサンドラには、その枷がない。
 だから国王は、その力を制御するために、ジーナシス王国から特殊な材料を仕入れて、魔法が使えない部屋を作ったそうだ。
 でもカサンドラがその部屋に入れられるのは、国王がそう指示したときだけ。
 周囲の人間を虐げたり、我が儘を言うくらいなら放置してきた。
 貴族であった頃のクロエは知らなかったが、正義感が強く、頻繁に国王に意見する王太子を疎ましく思い、魔女のカサンドラを王太女にするのではないかという噂もあったようだ。