婚約破棄されたので、好きにすることにした。王城編

「魔女の魔法は、願えば叶う。世間ではそう言われているけれど、そんなに万能でもないわ。制限はたくさんあるもの」
 リーノはそう言って、肩を竦める。
「たとえば、人の生死に関わることは叶えられない。人の精神に干渉することもできない。できるのは、意識を逸らすくらい」
 クロエは頷く。
 アリーシャが婚約者を守るために使っている魔法や、クロエが元のクロエだとわからないようにしているのも、その意識を逸らす魔法だ。
 でも、カサンドラがエーリヒに執着している心を、変えることはできない。
「魔女は、呪文や魔法陣に縛られないで魔法を使える。そんなものよ。クロエさんは、今までどんな魔法を使ったの?」
「ええと、最初は、髪色を変える魔法で……」
「いや、王女の監視魔法を吹き飛ばしてくれたのが、最初だった」
 背後で静かに聞いていたエーリヒが、そう言う。
「ああ、そうだったかも」
「監視? 王女って、あの偽魔女よね?」
「はい。エーリヒは、その王女殿下に執着されていて……」
 クロエは前世のことだけは伏せて、自分たちが王城を出ることになった経緯を簡単に説明した。
「信じられないわ。魔女にそんな扱いをするなんて」
「いえ、私が魔法を使えるとわかったのは、王城を出る寸前で」
 魔女を軽視されて怒っていると思ってそう言ったが、リーノはクロエの言葉に首を横に振る。
「私の言い方が悪かったわ。自分の婚約者と娘にそんな扱いをするなんて、許されないわ」
 クロエが魔女ではなかったとしても、リーノはクロエのために怒ってくれただろう。
 そう思うと、心が軽くなる。