婚約破棄されたので、好きにすることにした。王城編

(私の、魔女としての使命……)
 もちろん、前世の影響もある。
 その使命が根底にあったから、移民のように見える姿に拘っていたのだろうか。

 リーノはまだ病み上がりなので、今日の話はここまでにした。
 クロエは他の病人の様子を見て回り、問題のないことを確かめて、自分に宛がわれた部屋に戻る。
 ベッドに座って、先ほどの話を静かに思い返す。
 魔女の力に目覚めたとき、理不尽なほど強い力だと思った。
 あまりにも強い力に、恐怖を覚えたくらいだ。
 でもそれが、果たさなくてはならない使命のために与えられた力だと聞いて、納得する。
 それと同時に、自分が本当にそんな使命を果たすことができるのか、という不安もあった。
(しかもこの国を改革する、なんて)
 自分にそんなことができるだろうか。
 そう思っているのに、同時に、何があってもやらなくてはならないという気持ちもある。
 無理でも、何年掛かっても、必ずやり遂げなくてはならないと。
「なるほど。これが、魔女の使命」
 だとしたら、前世の記憶が蘇り、変装しなければならないときに黒髪を選んだのも、その使命に導かれた結果なのかもしれない。
 もし無難な色にして、市民の中に溶け込んでいたら、この国が抱える問題について、そこまで深く考えなかっただろう。
 そんなとき、ふと扉が叩かれて、エーリヒの声がした。
「クロエ、入ってもいいか?」
「うん、もちろんよ」
 扉を開けて、エーリヒを迎え入れる。
 彼はすぐにクロエを抱きしめてくれた。
「混乱していないか?」
「少し」