この国の騎士は、父と同様に剣に優れている必要がなく、名誉職のようになっている。王都の門を守ってはいるが、形式的なもので、実際に何かあったら戦うのは警備兵だ。昔は警備兵ではなく、優秀な冒険者を雇って、手駒にしていたようだ。
だがその冒険者が問題を起こせば、後見人の貴族の責任になる。
実際、昔はその制度を悪用して、敵対勢力を陥れるような事件が多発した。
そのため、今はほとんどの貴族が独自に警備団を所有している。
そんなこともあって、今はあまり使われていない制度だと言っていたし、貴族と関わり合いになるつもりはなかったので聞き流していた。
だからマードレット公爵家がクロエとエーリヒのために、そこまでしてくれるとは思わなかった。
エーリヒも喜ぶどころか、疑うような目でアリーシャを見ている。それと引き換えに、何か要求があるのではと思っているのだろう。
「カサンドラ王女殿下の手から逃れて、ようやくふたりの暮らしを始めたのに、ここに呼び戻してしまったのは私よ」
アリーシャは、そんなエーリヒの視線を正面から受け止めて、そう言った。
「私は貴方たちのこれからの人生を、変えてしまうほどの選択をさせてしまった。だから貴方たちの安全と、行動の責任は私が……。マードレット公爵家が担うわ」
「そこまで……」
さすがにクロエも驚いた。
移民だから、国籍を持たない庶子だからと、ふたりを侮る者がいたとしても、マードレット公爵家が後見人になると聞けば、態度を変えるに違いない。
立場によって関わる人たちの対応が変化することは、移民として暮らしてきたクロエが一番よく知っている。
だがその冒険者が問題を起こせば、後見人の貴族の責任になる。
実際、昔はその制度を悪用して、敵対勢力を陥れるような事件が多発した。
そのため、今はほとんどの貴族が独自に警備団を所有している。
そんなこともあって、今はあまり使われていない制度だと言っていたし、貴族と関わり合いになるつもりはなかったので聞き流していた。
だからマードレット公爵家がクロエとエーリヒのために、そこまでしてくれるとは思わなかった。
エーリヒも喜ぶどころか、疑うような目でアリーシャを見ている。それと引き換えに、何か要求があるのではと思っているのだろう。
「カサンドラ王女殿下の手から逃れて、ようやくふたりの暮らしを始めたのに、ここに呼び戻してしまったのは私よ」
アリーシャは、そんなエーリヒの視線を正面から受け止めて、そう言った。
「私は貴方たちのこれからの人生を、変えてしまうほどの選択をさせてしまった。だから貴方たちの安全と、行動の責任は私が……。マードレット公爵家が担うわ」
「そこまで……」
さすがにクロエも驚いた。
移民だから、国籍を持たない庶子だからと、ふたりを侮る者がいたとしても、マードレット公爵家が後見人になると聞けば、態度を変えるに違いない。
立場によって関わる人たちの対応が変化することは、移民として暮らしてきたクロエが一番よく知っている。


