婚約破棄されたので、好きにすることにした。王城編

 そのことに、クロエは驚く。
「でも、それらしい力を持っているのだから、別に魔女と名乗るのは自由よ。ただ、私たちの国では魔女ではない、というだけ」
 アダナーニ王国は、魔法に関しては後進国だ。魔導師の数も、他国から見れば信じられないくらい少ない。
 そんな状況だから、国王は多少力が弱くても、アダナーニ王国にも魔女がいると示したかったのだろう。
 まして、カサンドラは王女である。
 でもカサンドラが違うのだとしたら、クロエもまた、髪色が同じというだけでは、魔女とは言えないのではないか。
 まして、魔女には使命があるのだという。
 そんなものを、今まで一度も感じたことがなかった。
「私も違うのかもしれない。私には、使命なんて」
 けれどリーノは、笑って首を振る。
「あなたには、使命があるわ。今のあなたの姿を見れば、すぐにわかる」
「私の?」
 慌てて自分の体を見渡してみるものの、何も変わったところはないように思える。
「ごめんなさい。急に話しすぎたわね」
 混乱しているクロエを見て、リーノは優しくそう言ってくれた。
「でも、まだ知りたいことはあるでしょう? あなたは私の命の恩人よ。私に答えられることなら、何でも聞いてね」
「はい。ありがとうございます」
 エーリヒが戻ってきたら紹介すると約束して、クロエはリーノの部屋を離れた。
「びっくりした……」
 部屋を出た瞬間、思わずそう口走ってしまう。
 まさかこんな場所で、ジーナリス王国の魔女に出会えるとは思わなかった。
 しばらくその場に立ち尽くしていたが、ここにいても仕方がないと思い、宛がわれた部屋に戻る。