婚約破棄されたので、好きにすることにした。王城編

 驚きのあまり、警戒していることさえ忘れて、クロエは彼女を見つめた。
 まさか彼女が、ずっと会いたいと思っていた魔女だとは思わなかった。
「ジーナリス王国以外で完全な魔女が生まれるなんて、とても珍しいことよ。でも、あなたは間違いなく魔女だわ」
 そう言ったリーノは、自分の髪に触れる。
 倒れたときにツインテールにしていた髪は、今は解かれ、緩くカーブを描く白金の髪は、彼女の幼い体を守るように包み込んでいる。
「あなたの元の髪色は、私と同じよね。この色は、魔女の証でもあるのよ」
「魔女の……証?」
 たしかに以前のクロエも、彼女と同じように白っぽい金髪だった。
 それを散々地味だと疎まれていたが、まさかそれが魔女の証となる色だとは思わなかった。
「この色が?」
「この国には伝わっていないみたいね。ジーナシス王国は、あまり他の国とは交流がないから。でも魔女は必ず、この髪色とそれぞれの使命を持って生まれるの」
 クロエはリーノと同じように、自分の髪に触れてみる。
 今は黒髪だが、たしかにクロエの髪はリーノと同じ色だった。
「でもカサンドラ王女殿下は……」
 この国唯一の魔女であるカサンドラは、金色の髪をしている。
「あー、あれね」
 リーノは肩を竦めて笑った。
「噂には聞いているわ。でもジーナリス王国の概念だと、彼女は魔女ではないわね。髪色も違うし、使命も持っていない。でも魔女に近い力を持っているから、まぁ、他の国では魔女と認められるでしょう」
 この国であんなにも恐れられているカサンドラだったが、ジーナリス王国の魔女であるリーノにとっては、魔女ではないらしい。