婚約破棄されたので、好きにすることにした。王城編

「両親らしき者はいなかった。ただ、やはり向こうの集落でも、熱病に罹った者がいるようだ」
「わかった。まだ薬もあるし、そこに行こう」
 眠った少女をエーリヒが抱き上げてくれて、そのまま集落に向かうことにした。
 花畑の奥に続いている道は、あまり広くなく、雑草が生い茂っている。
 普段から人通りは少なかったのかもしれない。
 少し坂道を登っていくと、集落が見えた。
 家が十軒ほどあるだけの、とても小さな集落だ。
 クロエたちを追い返した町の警備兵の話によると、ここは移民たちが暮らす場所らしい。それぞれの家の隣に畑があり、そこで野菜などを育てて暮らしているようだ。
 クロエたちが集落に辿り着くと、数人の人たちが、不安そうな顔をしてこちらの様子を伺っていた。
「薬を持っています。病気の人たちのところに、案内してください」
 突然の来訪者に住人たちは怯えていたが、クロエが黒髪だったので安心したのか、すぐに案内をしてくれた。
 エーリヒは彼らを刺激しないように、フードを深く被ったままだ。
 病人は、ひとつの家にまとめて寝かされていた。
 そこは古い平屋だったが部屋数が多く、病状によって部屋を分けていた。
 ひとりの女性が、クロエを中に案内してくれた。
「数日前から、子どもや老人が次々と高熱で倒れてしまって。中には回復した人もいますが、まだ寝込んでいる人もいます。どうか助けてください」
「ええ、もちろん」
 そう言って、クロエは力強く頷いた。
 クロエが連れてきた少女が一番高熱だったので、彼女を別の部屋に寝かせることにした。
 それから、病人たちの看病をする。