婚約破棄されたので、好きにすることにした。王城編

「そうだな。クロエとゆっくり景色を見ながら歩くのも、良いかもしれない」
 こうして、次の町まで徒歩で行くことが決まった。
 いつも宿を引き払うときは、次の宿の手配と馬車を頼んでいた。だが今回は、依頼を受けるかどうか、向こうの町に到着してから決めることになっている。
 だから何も頼まずに、宿を引き払って町を出た。
 まだ早い時間だったせいか、人も姿はなかった。
 だが反対側の道には人がたくさんいたことを考えると、本当にこの先の町との交流はあまりないのだろう。
(どんな町なのかな……)
 よそ者を嫌う町だというから、あまり歓迎されないかもしれない。
 そんなことを思いながら歩いていると、右側に大きな池が見えてきた。
「ここが遊歩道ね」
 大きな池の周りには道があり、池を一周できるようになっていた。
 その周辺には花も咲いていて、景色を眺められるようにベンチも設置してある。
「少し歩いてみるか」
「うん」
 エーリヒにそう言われて、ふたりで池の周りを歩く。
 水草の浮いた池には水鳥がいて、呑気に泳いでいる。
 天気も良く、明るい日差しが差し込んで、とても気持ちが良い。
 人がいないので、エーリヒもクロエもローブのフードを外し、ゆったりとした気分で過ごすことができた。
「お弁当を持ってくればよかったね」
「そうだな」
 そんなことを話しながら、そろそろ町に向かおうと、立ち上がる。
 歩きながら周囲の景色を眺めていたクロエは、花畑の向こう側にも道があることに気が付いた。
(きっと向こうにも集落があるのね……。ん?)
 クロエは足を止める。
 道の途中で、誰かが倒れているように見える。