婚約破棄されたので、好きにすることにした。王城編

 何も見えていないとは思えない、正確さだった。
 だが魔物も、すぐに反撃に出る。
「左!」
 左腕を振り上げたのを見て、そう叫ぶ。
 エーリヒはそれを避けて、今自分がいた場所に剣を振り下ろす。
 魔物は、甲高い悲鳴を上げて飛び退いた。
「……声が聞こえた」
 今の悲鳴は、エーリヒにも聞こえていたようだ。
「あの白い花の方まで逃げていったよ。傷は負っているけど、まだ動けないほどじゃないかも」
 エーリヒの剣は確実に当たったようだが、大型の魔物には致命傷にはならなかったようだ。
 再び剣を構えたエーリヒに、クロエは魔物の位置を正確に伝える。
「後ろに下がった。逃げるかもしれない」
 何度かエーリヒに襲いかかり、その度に傷を負った魔物は、少しずつ後退しようとしていた。
「足止めするね」
 クロエは魔法で魔物の足止めをして、その位置をエーリヒに伝える。
 だが魔物は動けないまま、切り込んできたエーリヒに向かって、腕を振り上げた。
「右に!」
 クロエはそう叫ぶ。
 魔物の姿が見えないエーリヒは、攻撃をどう避けたらいいのかわからなかったようで、振り下ろされた魔物の腕を、クロエの魔法が掛けられた右腕で受け止めた。
 この状態で魔物が反撃するとは思わず、焦ったクロエはほっと息を吐く。
「!」
 魔物の攻撃を腕で受け止めたエーリヒは、それで魔物の位置を正確に掴んでいた。そのまま魔物を押さえつけ、止めを刺す。
 絶命した魔物は、ようやくその姿を現した。
「消えたままならどうやって報告するかと思ったが、これなら大丈夫そうだな」
「ごめんなさい」