なぎの家に入ると、美奈は思わず声を漏らした。
「すごい…なんか、時間が止まってるみたい」
「祖母が大切にしていたものばかりで…今も、なるべくそのままにしているんです」
居間には、古い柱時計が静かに時を刻んでいた。
棚には陶器の人形や、レトロなラジオ。
そして、部屋の奥に、大きな鏡が立っていた。
「この鏡…すごくきれい。アンティーク?」
「ええ。とても古いものです。祖母が“特別な鏡”だと言っていました」
なぎは、鏡の前に立ち、そっと手を触れた。
その瞬間、鏡の表面がふわりと揺れた。まるで水面のように。
「えっ…今、揺れた?」
「美奈さん。少しだけ、こちらへ来てみませんか?」
なぎが手を差し出す。
鏡の中には、なぎとそっくりな少女が立っていた。
でも、表情が違う。
笑っているのに、目が笑っていない。
「こっちの世界は、静かで、誰にも邪魔されません。美奈さんなら、きっと気に入ると思います」
美奈は、なぎの手を見つめた。 鏡の中から、かすかに風の音が聞こえた。春の風とは違う、冷たい風。
「…なぎちゃん?」
なぎは、優しく微笑んだ。
「大丈夫。少しだけ、見てみましょう」
「うふふ…」
その笑い声は、いつもの優しい声と違って、どこか空っぽだった。
「え…どうしたの…?なぎちゃん…?」
なぎは、鏡の中でこちらを見つめたまま、ゆっくりと首をかしげた。
その瞳は、まるで感情が抜け落ちたように、ただ静かに揺れていた。
「ねえ、美奈さん。ここなら、ずっと一緒にいられますよ」
「やだ…なにそれ、、、どういうこと」
美奈は一歩、後ずさった。
でも、足元がふわりと揺れた。
まるで床が水に変わったように、重力がねじれる。
「ごめん!!やっぱり帰る!!」
叫んで、玄関の方へ駆け出そうとした瞬間—— 鏡の中から、なぎの手が伸びた。
「だめですよ、美奈さん。もう、選んでしまったんですから」
その手が、美奈の腕をつかんだ。
冷たい。氷のように、冷たくて、重い。
「やだっ、やだやだっ!!」
美奈の叫び声が、鏡の中に吸い込まれていく。
視界がぐにゃりと歪み、空気が水に変わる。
そして——美奈の姿は、鏡の中へと、静かに沈んでいった。
「すごい…なんか、時間が止まってるみたい」
「祖母が大切にしていたものばかりで…今も、なるべくそのままにしているんです」
居間には、古い柱時計が静かに時を刻んでいた。
棚には陶器の人形や、レトロなラジオ。
そして、部屋の奥に、大きな鏡が立っていた。
「この鏡…すごくきれい。アンティーク?」
「ええ。とても古いものです。祖母が“特別な鏡”だと言っていました」
なぎは、鏡の前に立ち、そっと手を触れた。
その瞬間、鏡の表面がふわりと揺れた。まるで水面のように。
「えっ…今、揺れた?」
「美奈さん。少しだけ、こちらへ来てみませんか?」
なぎが手を差し出す。
鏡の中には、なぎとそっくりな少女が立っていた。
でも、表情が違う。
笑っているのに、目が笑っていない。
「こっちの世界は、静かで、誰にも邪魔されません。美奈さんなら、きっと気に入ると思います」
美奈は、なぎの手を見つめた。 鏡の中から、かすかに風の音が聞こえた。春の風とは違う、冷たい風。
「…なぎちゃん?」
なぎは、優しく微笑んだ。
「大丈夫。少しだけ、見てみましょう」
「うふふ…」
その笑い声は、いつもの優しい声と違って、どこか空っぽだった。
「え…どうしたの…?なぎちゃん…?」
なぎは、鏡の中でこちらを見つめたまま、ゆっくりと首をかしげた。
その瞳は、まるで感情が抜け落ちたように、ただ静かに揺れていた。
「ねえ、美奈さん。ここなら、ずっと一緒にいられますよ」
「やだ…なにそれ、、、どういうこと」
美奈は一歩、後ずさった。
でも、足元がふわりと揺れた。
まるで床が水に変わったように、重力がねじれる。
「ごめん!!やっぱり帰る!!」
叫んで、玄関の方へ駆け出そうとした瞬間—— 鏡の中から、なぎの手が伸びた。
「だめですよ、美奈さん。もう、選んでしまったんですから」
その手が、美奈の腕をつかんだ。
冷たい。氷のように、冷たくて、重い。
「やだっ、やだやだっ!!」
美奈の叫び声が、鏡の中に吸い込まれていく。
視界がぐにゃりと歪み、空気が水に変わる。
そして——美奈の姿は、鏡の中へと、静かに沈んでいった。



