豆腐のように脆いメンタルが、粉々に握り潰されている。人の心を食い物にして殺戮を繰り返してきた巨大な化け物が、着々と距離を縮めている。伊織を見つけ、翔真を見つけ、順番に殺そうとしている。首を絞め、胸を刺し、自身の娯楽のために殺そうとしている。無邪気に、無自覚に、鋭利な刃物を振り回して殺そうとしている。いつ殺されるか知れない状況で、平然としていられるはずもなかった。
激しく嘔吐くと目の前が滲んだ。ぼやける視界の先には、便器に溜まっている水と混ざり合う吐瀉物。また不快感に襲われた。吐いた。時間差で、饐えた嫌な臭いまでも襲いかかってきた。吐いた。
頭の中では声が響いていた。姿の見えない、男か女かも、子供か大人かも判断できない無機質な声が、翔真の身体を蝕んでいた。吐いた。聞こえる声が被害妄想によるものだとしても、被害妄想をしてしまうくらいには、自分を保つための精神は擦り切れていた。
吐いた。吐いた。もう出るものはなかった。ないのに吐きそうだった。全身に打ち込まれた先の尖った言葉を、吐いて捨ててしまいたかった。
嘔吐感が治まったところで、容赦なくへし折られ擦り潰されたメンタルは少しも回復しなかった。力なく床にへたり込む。トイレの床に座る行為に心理的な抵抗もないほど憔悴していた。便器からは悪臭がしている。弱々しく吐く息すらも臭っている。気にする余裕もなかった。
「あまみや……」
吐瀉物の不快な味が残る舌が、無意識に動いた。か細く消え入りそうなその声は、助けを求めるようでもあり、許しを請うようでもあった。
頼れるのは伊織しかいない。困った時に共に悩んでくれるような、あるいは手を貸してくれるような親友などではないのに。
黒煙を上げて燃えているSNS上で、誰にも救われずに揃って火だるまになっているという共通の惨い事実だけで、自分には伊織しかいないと思った。伊織だけだった。
激しく嘔吐くと目の前が滲んだ。ぼやける視界の先には、便器に溜まっている水と混ざり合う吐瀉物。また不快感に襲われた。吐いた。時間差で、饐えた嫌な臭いまでも襲いかかってきた。吐いた。
頭の中では声が響いていた。姿の見えない、男か女かも、子供か大人かも判断できない無機質な声が、翔真の身体を蝕んでいた。吐いた。聞こえる声が被害妄想によるものだとしても、被害妄想をしてしまうくらいには、自分を保つための精神は擦り切れていた。
吐いた。吐いた。もう出るものはなかった。ないのに吐きそうだった。全身に打ち込まれた先の尖った言葉を、吐いて捨ててしまいたかった。
嘔吐感が治まったところで、容赦なくへし折られ擦り潰されたメンタルは少しも回復しなかった。力なく床にへたり込む。トイレの床に座る行為に心理的な抵抗もないほど憔悴していた。便器からは悪臭がしている。弱々しく吐く息すらも臭っている。気にする余裕もなかった。
「あまみや……」
吐瀉物の不快な味が残る舌が、無意識に動いた。か細く消え入りそうなその声は、助けを求めるようでもあり、許しを請うようでもあった。
頼れるのは伊織しかいない。困った時に共に悩んでくれるような、あるいは手を貸してくれるような親友などではないのに。
黒煙を上げて燃えているSNS上で、誰にも救われずに揃って火だるまになっているという共通の惨い事実だけで、自分には伊織しかいないと思った。伊織だけだった。



