嘘と欲求

 衝動的な自殺もできない。何もできない。嘘しか吐けない。人に迷惑をかける嘘しか吐けない。承認欲求を満たすための嘘しか吐けない。身勝手な嘘しか吐けない。その嘘も、暴かれようとしている。

 嘘であるのを他人から指摘されるくらいなら、自分から先に認めてしまった方が角は立たないのではないか。嘘を吐くのをやめ、正直に打ち明けるべきなのではないか。きっと、そうだ。それがいいはずだ。

 正直に話そう。話して、謝るのだ。嘘を吐いていたことを。盗撮したことを。犯した事柄を認めて謝るのだ。

 悪いのはこの物語を始めた自分である。自分だけが悪い。伊織は悪くない。伊織への誹謗中傷はやめてほしいとも伝えなければ。罵詈雑言は自分が全て受ける。とにかく伊織から意識を逸らさせる必要がある。

 正常な判断力を失っている翔真は、爆弾を慎重に解除するように恐る恐るスマホを扱った。小刻みに震える指先で、拙い文章を打ち込んでいく。

【炎上の件について。自分に関する憶測は、事実であることを認めます。親友ではない人を親友と嘘を吐き続け、眉目秀麗な彼を盗撮して載せることでいいねを得ようとしました。申し訳ありません。全ての責任は自分にあります。彼に非はありません。彼に対しての誹謗中傷はやめてください。お願いします】

 膝を抱えた状態で、投稿した。勢いを止められず、投稿してしまった。心臓が早鐘を打っていた。

 これで攻撃の矛先が自分だけに向けばいい。叶うのなら、鎮火してくれればいい。謝罪したから、もう終わりにしてほしい。反省もしているから、もう終わりにしてほしい。いつまでも叩かないでほしい。

 落とした投稿は、即座に拾われた。注目される前であればあり得なかった。今は、悪目立ちしている。秒で反応され、秒で返信や引用が届けられる。

 数字が増える。増える。増える。爆発的に増えていく。翔真が表に出てくるのを、今か今かと待ち構えていたのかもしれない。