嘘と欲求

 画像には見覚えがあった。ありすぎた。ベンチの位置、遊具の位置、その他の情報。全てが記憶と重なった。ベンチの側で猫と戯れていた伊織の姿すら、載せられた画像で容易に想像できた。特定された。特定されてしまった。伊織の写真を撮った場所を。あの公園を。

 画面の中にいたはずの多数の敵が、液晶をぶち壊して飛び出してきたかのような錯覚に陥った。自分を殺しにくる人間が目と鼻の先にワープしてきたかのようにも感じ、翔真は怯えながら意味もなく息を潜めてしまった。家の住所が晒されたわけではないのに。一番危険なのは、写っている伊織の方なのに。

 呼吸が浅くなった。上手く息ができなくなった。このままガタガタと震え続けても、転機などやってこないのは自覚していた。恐ろしくても動かなければ、攻撃を防がなければ、あっという間に刺されて殺されるだけ。翔真に勝手に親友にされた被害者の伊織も、刺されて殺されるだけ。

 自業自得の翔真はともかく、道連れにされているに過ぎない伊織が殺されるのは絶対に違う。伊織に魔の手が触れる前に、手を打たなければならない。

 ネット上では特定班と呼ばれる何者かに公園を晒され、焦燥感と責任感が風船のように膨らんでいた。恐怖に飲み込まれ放置し続けていたら、伊織本人が特定される恐れがある。嫌がらせされる恐れがある。翔真の投稿のせいで。翔真が親友にしたせいで。

 追い詰められた伊織がとうとう自殺でもしたら、一生拭えない罪悪感でこちらも死んでしまう。伊織が死ぬ結末だけは、絶対に迎えたくない。迎えさせてはならない。

 焦燥感と責任感を内包した風船がパンパンに膨らみ、肩が揺れてしまうような音を発して破裂した。四方八方に散らばる目に見えない中身。全身に流れ込んでくるそれが、意気消沈していた翔真に少しの勇気を与え、奮い立たせた。

 一度は死んだ方がいいと思った。死ぬしかないと思った。死ねば物語を強制的に終わらせられると思った。でも、未だ、死ぬための行動を何一つ起こせていない。爆弾じみたスマホを手放せずに握り締め、回転椅子に膝を抱えて座ったまま。