そのキス、契約違反です。~完璧王子の裏側には要注意~




「…お酒飲んでも、記憶なくなるタイプじゃないって……本当?」


言い終えた瞬間。

空気が、ぴたりと止まった。


返事はない。


でも、沈黙が続くほどにその答えははっきりしていく。


周囲では相変わらず歓声が上がっているはずなのに、まるで防音ガラスの向こうにいるみたいに音が遠かった。


「蓮が、何考えてるのかわかんない」


気づいたら、そんな言葉がこぼれていた。

嘘ついた理由なんて聞かなくてもいいはずなのに。
でも、知りたかった。

やがて、蓮は観念したみたいに小さく息を吐く。


「………困らせると思ったから」


ぽつり、と小さく呟いた。


「だから…覚えてないことにした方が、良いと思った。」


その声はいつもより弱くて。

指先が、私の腕から離れる。


「彩葉も昨日からなんかずっとそっけないし…嫌だったんだろうなって思って…」


…なに、それ。

確かにびっくりはしたけど…


「別に、嫌だったなんて…一言も言ってないじゃん」


思わず振り返ってそう言うと、
蓮が、はっとこちらを見る。


「…言うだけ言っておいて、自分だけ知らないふりしてたのはムカついたけど。」


その言葉に、蓮の指がぴくりと動く。


「でも、せっかく仲良くなれたと思ったのに嘘つかれたのは……ちょっと、寂しい」


……って、私何言ってるんだろ。