そのキス、契約違反です。~完璧王子の裏側には要注意~




「これ以上は俺の口からは言えないかなぁ。蓮に直接聞いてみな?」


絢斗さんは少しだけ困ったように笑って、その一言だけを残して蓮のいる輪のほうへ戻っていった。


私は、その場に取り残されたまま。

組の人たちに囲まれて笑っている蓮を、遠くで見つめる。


……え、


…………じゃあ昨日のこと、全部酒のせいで勢いで言っただけの、冗談…?


別に、嘘だったからどうってわけでもないはずなのに、なぜか、胸がちくりと痛む。


でも、どれだけ私の心をかき乱したと思ってるの。

ひとり頭を悩ませていると、横から低い声が響く。


「随分、息子と仲良くなったみたいだな」

「創さん…!」


振り向いた先で、創さんは静かに私を見下ろしていた。

表情は穏やかなのに視線は鋭くて。

まるで、全部見透かされているみたいで、背筋がひやりとする。


「蓮に友人が出来たのはいいことだ。仲が良いのも構わない。仲良くしてやれとも言ったしな」


…なんとなく、次に言われる言葉が予想できてしまう。


一拍。

ほんのわずかな沈黙のあと、創さんの目が更にすっと鋭くなった。


「だが——羽目を外すんじゃないぞ。もう一度言うが、これ以上の関係にはなるな。」


護衛としての忠告。
立場として、正しい言葉。


「……はい」


そう答えるしかなかった。

それ以上何か言えるはずもなくて、ただ静かに頷く。


視線を逸らすと、遠くで絢斗さんがこちらを見ているのが分かった。

騒がしい輪の中にいながら、静かに目を細めて。