そのキス、契約違反です。~完璧王子の裏側には要注意~




「……っ!」


一気に走り抜け、暗い倉庫へ飛び込めば、そこには複数の男に囲まれ、肩から血を流しながら戦う蓮さん。
その横には、縛られて倒れている銀髪の男の人。


蓮さんはその男性を庇うようにして、何人もの攻撃を捌いていた。


既に床で倒れている男が大勢いるけど…これ、蓮さん一人で…?

“守られるほどヤワじゃない”とは言ってたけど…。


…でも、数が多すぎる。
蓮さんの息は荒く、足下が揺らいでいる。


さらに奥から増援らしき男たちが雪崩れ込み、ひとりの男が、蓮さんの背後から鉄パイプを振り上げた。

この距離じゃ、振り返る時間はない。


「やめろ!!」


私は飛び込み、男の胸元に蹴りを叩き込んだ。

ゴッ、と鈍い音。
続けざまに周囲の敵をドミノ倒しのように薙ぎ倒す。

あらかた片付けたところで振り返ると、蓮さんが目を見開いてこちらを見ていた。


「……は、なんで……」


…それはこっちのセリフなんだけど!

今ここで何が起きているのか説明してほしい。

でも今はそれどころではないので、私はすぐに蓮さんの横にいた男の人の縄をほどき、支え上げる。


「いいから、逃げるよ!」


私は二人の腕を引き、全速力で倉庫を飛び出す。
後ろからまだ追っ手の足音が響いてきて、どう撒こうか思考をぐるぐると巡らせる。


「チッ……しつこいな」

「そこ、曲がったところに俺の車がある!」


先程蓮さんが庇っていた男の人がそう叫び、曲がり角に止まっていた黒い車の運転席に滑り込む。

私と蓮さんも後部座席に一気に駆け込み、ドアを乱暴に閉めた。


「……っ、はぁ……」


タイヤが大きく鳴り、車は闇の中を一気に駆け抜けていく。


やっと追っ手の気配が遠ざかり、私は大きく息を吐いた。