そのキス、契約違反です。~完璧王子の裏側には要注意~







保健室を出ると、外は相変わらず騒がしかった。

応援の声、笛の音、スピーカー越しのアナウンス。

午前中の競技が一段落したとはいえ、グラウンドの熱気はまだ冷めていない。


私は律と並んで歩きながら、無意識に足元ばかり見ていた。

怪我をした足が痛いからじゃない。胸の奥に溜まったままの気持ちが、重たかったから。


テントに近づいてきたところで、少し先の人だかりの向こうで聞き覚えのある名前が耳に届いた。


「蓮くん!」


思わず、足が止まる。

視線を上げると、そこにいたのは…蓮と、ひとりの女子生徒。

緊張した面持ちで、まっすぐ蓮の前に立っている。

…さっき、蓮の話をしてた子。



周囲には、少し距離をとって様子をうかがうクラスメイトたち。



……あ、これ。


告白だ。



蓮は少し困ったように、でもとても優しい顔で笑っていた。


「……ありがとう。でもごめんね、気持ちには答えられないんだ」


相手を傷つけないような断り方。
声も、態度も、柔らかい。

女子生徒は一瞬俯いて、それから顔を上げて一歩近づいた。


「じゃあ……友達からでも!仲良くなりたいです!」


その言葉に、胸がざわつく。


…なんか…見たくないな。


何故かわからないけど、そう思った次の瞬間私は反射的に視線を逸らしていた。