「今日の彩葉」
耳元で律の声が落ちる。
「いつもより蓮くんのこと意識してるの、俺が気づいてないとでも思った?」
………!
わたし、そんなに顔に出てたかな…?!
「別に何があったかは聞かないけど」
さらに距離を詰めてきて。
「……ちょっとくらい、独り占めさせて?」
律の体温が背中越しに伝わってきて、肩に重みがかかる。
顎が、私の肩に軽く触れた。
抱きしめられてはいない。
でも、完全に囲われている。
「り、律……」
名前を呼ぶと、吐息がかすかに混じった声が耳元で返ってくる。
「彩葉が思ってるほど、俺は大人じゃないよ」
表情は見えないのに、声だけがやけに鮮明で。
一瞬、時間が止まったみたいに感じた。
…こんな律、知らない…っ
どうしてこんなに、心臓がうるさいんだろう。
「なんてね。戻ろっか」
ふっと空気が緩む。
律は一歩引いて、いつもの軽い笑いを浮かべた。

