「しばらくは無理しないこと」
念を押すみたいに言われて、私は小さく頷いた。
「……うん」
ベッドの端に座ったまま、足首を軽く動かす。
…まだ少し痛むけど、歩けないほどじゃない。
窓の外からは、応援の声がかすかに聞こえる。
「とりあえず、歩けるぐらいにはなったからもう大丈夫だよ。ありがとね、律」
ベッドから立ち上がり、そう言いながらドアへ向かう。
──でも、ドアに手を伸ばしたその瞬間。
私がドアノブに触れた手の上に、後ろからもう一つの手が重なった。
指先を包むみたいに。
ドキッ、と心臓が鳴る。
「……もう戻るの?」
すぐ後ろから、律の声。
近い距離に振り向くこともできず、そのまま固まってしまう。
「もう少しここにいようよ」
「…サボりはだめだよ。律、次の競技あるでしょ」
動揺を悟られないようにいつもみたいに答えるけど、律は私の手を離さないまま。
「だって戻ったら、あいつのところ行くじゃん」
“あいつ”………って、蓮のこと…?
「そりゃ、護衛だし……」
その瞬間、背後の気配が一段近づく。
手首に添えられていた手が、壁へ。
更に逃げ道がなくなって、ほとんど、抱きしめられてるみたいな距離。

