え、待って。
というか近っ……!
抱き上げられている、と理解するのに数秒かかる。
息がかかるほどではない。
でも、視線を逸らしても逃げ場がない距離。
心臓の音が、やけに大きく聞こえる。
「……っ!!」
思考が一気に追いつかなくて、変な声が喉に詰まる。
さっきまで、昨日のこととか、蓮を転ばせようとした怪しい人影のことで頭がいっぱいだったのに。
全部、吹き飛んだ。
「り、律……!」
「ほら、暴れないの」
そう言いながら、律の腕に少しだけ力がこもる。
ぎゅっと、支えるみたいに。
でもそれが、妙に安心感があって……落とされる心配なんて一切ない。
「……慣れてるね」
思わず、ぽつりと零すと、
「んー、どうだろ」
律は歩きながら軽く笑った。
「彩葉のすぐ無茶するとこには慣れてるかな」
ちらっと向けられた視線に、胸が詰まる。
…う、それは、否定できない……。
これは過去の数年分の言葉の重みが詰まってるな…。
「ま、彩葉のそういうとこ、好きだけど」
さらっと言われた“好き”という言葉に、心臓が跳ねた。
「なにその顔」
律がくすっと楽しそうに笑う。
「律が、変なこと言うから…」
視線を逸らすと、律はますます楽しそうに言葉を重ねた。
「俺は事実を言っただけだよ?」
顔が熱くなるのがわかって、視線を逸らす。

