「いや、俺が連れてく」
即座に返す蓮。
相変わらず、私の身体を支えたまま。
いや何でここで対抗してんの…。
しかも、追い打ちみたいに——
「神楽! アンカー準備!」
先生、今そういう空気じゃないです!
お願いだから空気読んでください!
「…チッ。うるせぇなあの教師」
周りには聞こえない声量で小さく舌打ちをする蓮。
感情ダダ漏れすぎる。
「状況的に蓮くんは行かなきゃでしょ」
律が静かに言う。
私は一度、蓮を見上げてからできるだけ明るく笑った。
「蓮、大丈夫だから。一位とってきてよ」
心配させないように。
本当は全然大丈夫ではないけどそれは言わない。
蓮は、しばらく私の顔を見つめてから律に視線を移した。
「…彩葉のこと、頼んだ」
「言われなくても」
律はそう答えて、一歩前に出る。
そして自然な動きで、私の肩を抱いた。
蓮はクラスメイトに呼ばれて、グラウンドの方へ駆けていく。
その背中を見送っていると──
「ちょっと失礼」
そう言われて、意味を考える暇もなく
ふわり、と身体が浮いた。
「え」
視界が一気に高くなる。
反射的に律の胸元を掴んでしまって、指先が布を強く握った。
気づいた時には、私は律の腕の中にいた。

