「足──」
「大丈夫!ちょっと捻っただけ」
あまりに心配そうな顔をするから、思わず誤魔化すように明るく言った。
実際かなりしっかり捻ったみたいで、普通に立っていられるような状態でもないんだけど…。
「大丈夫じゃないだろ。保健室、連れてく」
そう言って、私の腕を自分の肩に回させて半ば抱き寄せるように身体を支えられる。
その距離の近さに一瞬だけ胸が跳ねたけど、今の蓮の表情は、そんなことを考えさせないくらい真剣だった。
──その時。
「神楽くん、次の競技のアンカー準備始まってるぞ!」
グラウンドの端から、係の先生の声が飛んできた。
「は──」
蓮の身体が、ぴたりと止まる。
蓮の肩が、ほんのわずかに強張ったのが分かった。
……今、「は?」って言おうとした?
内心の苛立ちがそのまま顔に出かけて。
でも、すぐにハッとしたみたいに視線を伏せる。
ここは学校。
そう言い聞かせるみたいに蓮は小さく息を吐いて、一拍置いてから顔を上げた。
「すみません、今行きます!」
そう言いながらも、蓮は私から手を離そうとしない。
離したくない、って言われてるみたいで。
「蓮、次の競技……」
……ああ、もう。
この人、完全に自分のこと後回しにしてる。
とはいえ、アンカーという大事なポジションで抜けるわけにもいかない。
むしろ蓮が怪我しなくてよかったよ。
そう思った瞬間、
「俺が保健室まで連れていくよ」
少し後ろから、落ち着いた声。
振り向くと、そこに立っていたのは律だった。
状況を一目見て、全部理解したみたいな顔。
一瞬、空気が張りつめる。

