そのキス、契約違反です。~完璧王子の裏側には要注意~




そして——

蓮が私の前に手を差し出してきた。


ぐっと握った拳。

……え。

一瞬、理解が追いつかなくて固まっていると、蓮が少しだけ首を傾げる。


「こういう時は、グータッチだろ?」


……もう、ずっと、心臓がうるさい。

走ったから息が上がってるだけかもしれない、でも、それ以上に…。


私は小さく息を吸って、そっと拳を出した。


「……そういえば、お題って何引いたの?」


呼吸を整しながら何気ないふうを装って聞くと、蓮は一瞬だけ、ほんの一瞬だけ目を泳がせた。


「え、あぁ……」


言い淀むみたいに視線を落として、手の中の紙を見つめる。

……?

そのまま蓮は何も言わず、その紙を私の方へ差し出した。



『一番信頼している人』



……信頼。

その言葉が、まっすぐ胸に落ちてきた。

任務だから、とか。
護衛だから、とか。
そういう理屈より先に。


お題を引いて真っ先に私の元に来てくれたことが──嬉しい。

自分でも驚くくらい素直にそう思ってしまって、頬が緩む。



蓮はすっと紙を引っ込めて、


「ほら、次の競技始まるから」


そう言いながら蓮は笑った。

…けど、その笑顔がほんの一瞬だけいつもより硬かった気がして。

目が合う前に、すっと視線を外される。


──気のせい、かな?


蓮は周りを見渡して軽く手を振って、クラスメイトの声に応える。

…相変わらず切り替え早いな。


「そうだね!」


私も、それに合わせるように笑った。