「でも……あんなに優しい人だよ?」
「好きな気持ちには嘘つけないよね〜」
無邪気で、まっすぐな声。
…少し、羨ましかった。
…私は昔から恋愛なんてする余裕がなかったし、こんな学生生活だってしてこなかった。
私はぎゅっと拳を握って、気持ちを押し込めた。
——そのとき。
場内アナウンスが響く。
「一位のアンカーがお題を引きました!!ここからは借り物競走です!」
蓮がゴール前でお題を引き、紙を開いていた。
その瞬間、一切迷わず
周囲も、歓声も、女子の視線も、全部無視して。
蓮の視線が一直線に——私を捉えた。
……え。
え、私?
「何引いたんだろう!?」
周囲がざわつく中、
蓮は迷うことなく私の目の前で足を止めた。
距離が一気に近づく。
「来て」
短く、それだけ。
気づいたときには自然に手を取られていて、そのまま引かれるように走り出していた。
——結果は、圧倒的だった。
アンカーの蓮と私はそのまま一位でゴールテープを切る。
わあっと、視界が揺れるほどの歓声。
「彩葉」
呼ばれて、顔を上げた瞬間。
そこにいた蓮は、
信じられないくらい、きらきらしていた。
汗で少し乱れた前髪。
息はまだ上がってるけど、すごく柔らかい笑顔で。
それも、
“作った笑顔”じゃない。
もっと、素で。
嬉しい、楽しい、やった、って全部顔に出てるみたいな。

