「……」
気づけばじっと見つめてしまっていたことに気づいて、私はそっと視線を逸らした。
その瞬間、隣から声が落ちてくる。
「蓮くん相変わらず人気だねぇ」
律だった。
軽く肩をすくめながら、余裕のある笑みを浮かべている。
「彩葉も出る競技多いんだっけ?」
「まあ……うん、それなりに」
体力測定の記録を基準に競技ごとにメンバーが選ばれて、私は“それなり”に運動ができるせいで気づけばリレー系の競技に次々名前が入っていた。
最低一人一競技出ればいいはずなのに、一個、二個、三個……と、いつの間にか増えていて。
そして、蓮も足が速いから必然的に同じ競技に出ることになるわけで。
……正直、少しだけ複雑だ。
そんなことを考えていた、そのとき。
突然、律に両手でほっぺをむぎゅっと引っ張られた。
「?!」
驚いて固まったまま、
私はほっぺをつままれた状態で律を見上げる。
「彩葉、何か今日上の空じゃない?」
軽い調子なのに、妙に核心を突いてくる。
「もー、いきなり掴まないでっ」
慌てて手を振り払って、誤魔化すように声を上げた。
「せっかくの体育祭なんだから、今日くらい羽を伸ばしなよ」
そう言って、律はにこっと笑う。
そのまま、意味ありげに視線をグラウンドへ戻した。
つられて私もそちらを見ると、ちょうどその先で競技の準備をしていた蓮がこちらを見ていた。
一瞬だけ、目が合う。
……と思った、次の瞬間。
蓮は何事もなかったみたいに視線を逸らして、
クラスメイトに声をかけられた方へ向き直ってしまった。

