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朝から学校全体がそわそわしていた。
校門をくぐった瞬間からあちこちで聞こえる笑い声と、慌ただしく靴が地面を蹴る音。
いつもより少しだけ騒がしくて、浮き足立った空気。
──今日は、体育祭だ。
廊下の壁には、クラスごとの応援ポスターがずらりと貼られている。
カラフルな文字とイラストに囲まれて、普段は無愛想な先生たちまでどこか機嫌がよさそうで。
学校全体が今日という一日を楽しみにしているのが伝わってくる。
…なのに。
どうにも私だけ気持ちが追いついていなかった。
昨夜のことが頭から離れなくて。
ふとした拍子に思い出してしまって、そのたびに胸の奥がきゅっと縮む。
蓮は今朝もいつも通りだった。
変わらない表情で朝食をとって、
変わらない態度で「行くぞ」と言って、
絢斗さんの車で、一緒に学校まで来た。
……何もなかったみたいに。
だめだ。
このままじゃ、今日一日ずっと引きずっちゃう。
──体育祭に集中しよう。
そうすれば、きっと気も紛れる。
私はウィッグの位置を指先で確かめて、男子用の体操服の襟元をきゅっと引き締めた。
グラウンドを囲むように設営された自分のクラスのテントへ向かうと、すでに生徒たちが集まり始めている。
その中で、ひときわ目立つ声が上がった。
「蓮様、今日もかっこいい!」
「蓮ーー!アンカー頼んだぞー!」
クラスメイト達が見つめる先は、グラウンドの中央で競技の準備をしている蓮。
「任せて。一位取るから」
軽く笑って返すだけで、また周りが沸く。
歓声と期待を当たり前みたいに受け止めている姿。
穏やかで、余裕があって、表情も完璧。
男子からも女子からも、自然と人が集まる。
……それが、“学校での蓮”。
朝から学校全体がそわそわしていた。
校門をくぐった瞬間からあちこちで聞こえる笑い声と、慌ただしく靴が地面を蹴る音。
いつもより少しだけ騒がしくて、浮き足立った空気。
──今日は、体育祭だ。
廊下の壁には、クラスごとの応援ポスターがずらりと貼られている。
カラフルな文字とイラストに囲まれて、普段は無愛想な先生たちまでどこか機嫌がよさそうで。
学校全体が今日という一日を楽しみにしているのが伝わってくる。
…なのに。
どうにも私だけ気持ちが追いついていなかった。
昨夜のことが頭から離れなくて。
ふとした拍子に思い出してしまって、そのたびに胸の奥がきゅっと縮む。
蓮は今朝もいつも通りだった。
変わらない表情で朝食をとって、
変わらない態度で「行くぞ」と言って、
絢斗さんの車で、一緒に学校まで来た。
……何もなかったみたいに。
だめだ。
このままじゃ、今日一日ずっと引きずっちゃう。
──体育祭に集中しよう。
そうすれば、きっと気も紛れる。
私はウィッグの位置を指先で確かめて、男子用の体操服の襟元をきゅっと引き締めた。
グラウンドを囲むように設営された自分のクラスのテントへ向かうと、すでに生徒たちが集まり始めている。
その中で、ひときわ目立つ声が上がった。
「蓮様、今日もかっこいい!」
「蓮ーー!アンカー頼んだぞー!」
クラスメイト達が見つめる先は、グラウンドの中央で競技の準備をしている蓮。
「任せて。一位取るから」
軽く笑って返すだけで、また周りが沸く。
歓声と期待を当たり前みたいに受け止めている姿。
穏やかで、余裕があって、表情も完璧。
男子からも女子からも、自然と人が集まる。
……それが、“学校での蓮”。

