そのキス、契約違反です。~完璧王子の裏側には要注意~




………え〜っと…。

えっ、ちょっと待って。


あのままみんなのいるところにいた方がマシだったのでは……?


しん、と静まり返った部屋で、私の心臓だけがやたらとうるさい。

隣で、くたっと私にもたれかかる蓮の重み。

いつもの強気でぶっきらぼうな蓮じゃなくて、少し力の抜けた、ふにゃっとした息遣いの蓮。

どうしたらいいのかわからなくて、私は背筋を伸ばしたまま固まっていた。


「……なぁ」

「はいっ……!?」


不意に声をかけられて、思わず変な声が出てしまう。

振り返った先で、蓮が半分とろけたような目つきで私を見ていた。


「榛名律って……なんなんだよ」

「えっ」


蓮は不満そうに眉を寄せながら、私の横顔を覗き込んでくる。

…というか、なんで急に律の話?


「前にも言ったけど……元仕事仲間、だよ?」


できるだけ落ち着いた声を作ったつもりだったのに、語尾が少し揺れる。


「ただの同僚の距離感じゃねーだろ」


むすっとした顔。

いつもなら威圧感の塊みたいなのに、今はどこか拗ねた子どもみたいで。


「あいつのお前を見る目。なんか……やだ」


ぼそぼそ文句を言いながら、蓮が私の髪を指に引っかけて、くるくる弄び始めた。


も、もう〜今日の蓮こそ、なんなのっ…!

気づけば、考えるより先に言葉がこぼれていた。


「…………嫉妬………?」


言うと、蓮がゆっくりまばたきをして…数秒、考えるように私を見つめた。

そして。

腰を、ぐいっと掴まれる。


「えっ……きゃ──!」


ふわっと身体が浮いて、次の瞬間。

──ドサッ。


柔らかい感触と共に背中がソファに沈み、見上げた視界を蓮の影が覆った。