律はそんなの気にした様子もなく、ほんの少し目元だけで笑う。
「だって彩葉を危険から守ってくれたのは事実でしょ?」
その言い方には、わざとなの?と思うくらい含みがあった。
蓮はフン、と視線を逸らす。
「ちなみに、今のキミが素?」
律の問いに、蓮はほんの短く息をついて返す。
「…さっきの俺を見てたんなら、もう隠す意味もねぇだろ」
…確かに。
あの蹴りもすごかったもんな。
というか、何かふたりとも、またバチバチしてる…。
この空気、絶対よくない。
「……あ、蓮。顔ちょっと汚れてる」
話をそらそうと、ふと気づいたことを口にした。
蓮の頬に、うっすらついた土埃。
私は何も考えず、指先でそっと触れてぬぐった。
——あれ?
大人しくされるがままの蓮を見て、触れてから思い出す。
初めて会った日は、同じように触れようとしただけで“身内以外に急に触られると反射で…”って、がっちり腕を掴まれたはず…。
「あっ、ごめん。急に触るのダメなんだっけ」
そう言うと、蓮は一瞬だけ眉を動かして、
視線をほんの少し落とした。
「……お前に触れられんのは、もう平気」
え、なにそれ……。
胸の奥が、じんわり熱くなる。
蓮が自分に心を開いてくれてるって、改めてはっきり伝わってしまって。
警戒心MAXだった猫が、気づいたら近くで喉を鳴らしてるみたいな……。

