そのキス、契約違反です。~完璧王子の裏側には要注意~





──4年前の潜入任務。

目的のクルーズ船に乗るため、パートナー同士である必要があった。
その時にたった一週間だけ、律と恋人を演じたことがある。



「馬鹿言わないで。もう、揶揄うなら他をあたってよ……」



つい口にしたその言葉に、律は軽く私の顎を掬い上げて顔を上げさせた。



「揶揄ってない」



真剣な眼差しが、いつもよりずっと近くて。



「…り、律。さっきからホントにどうしたの?」


「彩葉。…あの一週間、全部“演技”だと思ってた?」



律はゆっくり顔を近づけてくる。

まるで、答えをもう知っているかのように。



任務のための演技……そう言い切れなかった。

あの時も今も、演技だなんて思えないくらい律の視線はまっすぐすぎて。



「分かんないなら、もう一度キスしてみる?」



息が止まる。

このまま拒否しなかったら、どうなっちゃうんだろう──。



「…っ」



それでも私は、律の胸を押し返した。

小さく震える手の先に、律の温かさが触れる。


…律が揶揄ってくるのはいつものこと。

きっと、久しぶりに会ったから私の反応を楽しんでるだけだ。


それに…。


「……あの時のこと、怒ってないの…?」


声が少し震え、視線は下を向いたまま言った。