蓮に腕を引かれて半ば引きずられるみたいに廊下を歩いていた。
足取りは速いまま、向かった先は廊下の一番奥にある、誰も使っていない空き教室。
──ガチャッ。
扉が閉まり、静かな音が響いた瞬間。
空気がぴん、と張りつめた。
蓮は私の腕から手を離すどころか、逆に指先がじわっと力を強める。
「……さっきの何。」
怒ってる、というより……拗ねてる?
「何とは…」
「あいつに抱きしめらんのは平気なわけ?」
真っ直ぐ見つめられて、ドクッ、と心臓が跳ねた。
え、そこ……!?
蓮が一歩近づいてきて、後ずさると教室の壁が背中に触れた。
蓮の顔が、近い。
いつもの“無自覚な距離の近さ”とは全然違う。
今は…意図的に距離を詰めてきてる。
「俺が近づくと逃げんのに」
蓮の視線が落ちる。
鼓動が早まっていくのが自分でも分かった。
「れ、蓮…」
「俺はダメなの?」
…そ、そんな目で見つめないでよ…!
調子狂うじゃん…。
私の反応を伺うように、わざとらしい余裕なんか一つもないのに、平然とした顔して。
「ダメとか平気とかじゃなくて、律は昔から一緒にいたから多少慣れてるだけだよ…」
というか別に、律に触れられて平気というわけではない。
さっきはとにかく急に再開した驚きが大きすぎて全然気にしてなかったけど…。

