そのキス、契約違反です。




息を吸って、蓮と一緒にブーケを高く掲げる。



「いきますよー!」



軽く声をかけて、思いきり投げた。


白い花束が空を舞う。


高く、高く。
天井の光を受けて、花びらがきらきらと瞬いた。


スローモーションみたいに、時間が引き延ばされる。



誰かの指先が触れて、弾かれて──


次の瞬間。



「……え?」



律が、ブーケを抱えて立っていた。



一瞬、会場が静まり返る。


本人が一番驚いた顔をしていて、目を瞬かせたまま固まっている。


その姿があまりにも律らしくて、思わず笑ってしまった。



次の瞬間、どっとざわめきが起きて拍手が広がる。

視線が合うと律は困ったように肩をすくめて、でもどこか照れた笑顔を浮かべた。


「……勘弁してくれよ」


そう言いながらも、ブーケを大事そうに抱えている。



律も私と同じタイミングで、 Aegis(イージス)を引退した。

裏の世界を離れて、今は警察隊として表の世界で治安を守っている。


守る場所も立つ立場も変わったけど。

それでも律は、昔から変わらず、真っ直ぐで。


…どうか、律にも幸せが訪れますように。


花束に託すみたいに、心の中でそっと祈った。