そのキス、契約違反です。





「この先どんな人生になっても後悔はしない。俺が若頭の地位を降りるために何かしろというなら、なんだってやる。」



本気だ。


そもそも、もし神楽の名を捨てる覚悟がなかったらこんな話はしない。

無言で家を出て、縁を切る選択肢だってあった。


でも、それは──


育ててくれた両親にも、いつも背中を支えてくれた神楽組の人間たちにも、ただ背を向ける行為だ。


……それだけは、できなかった。


だから。



「俺は親父に、ちゃんと認めて欲しいんだ」



長い沈黙が落ちる。


畳の匂い、障子越しの光、遠くで鳴る車の音。

すべてがやけに鮮明に感じられる。


やがて親父は、深く息を吐いた。



「………子供というのは、どこまでも親に似るものだな。どこまでも真っ直ぐで…」



そしてぽつりと、独り言のように言う。



「俺も昔、今のお前と同じ顔をしていた。」



ほんの一瞬。

瞳の奥が、柔らかく揺れた気がした。