そのキス、契約違反です。





「俺は彩葉の隣にいたい。…でも、あいつはずっと暗い世界で生きてきた。俺が神楽組である限り、この先も普通の女の子にはなれない。」



言葉にしながら、胸の奥が軋む。


太陽の下で、危険なんてものと離れた世界で当たり前に笑って生きる選択肢を、俺自身が潰すことになる。


それは絶対にしたくない。



「それで?………女1人のために、組を捨てるか」



鋭い視線が突き刺さる。


長年、頭として組を率いてきた男の圧。

下手をすれば心ごと折られそうになる。


でも、親父はきっと俺を試している。

ここで怖気付くか、曲げないか。



「俺が神楽組を抜けることで不利益があるなら、それは全部引き受ける。俺が落とし前をつける。神楽の名を使うなと言うなら、全部捨てたっていい」



親父はふっと鼻で笑った。


「口ではいくらでも言える」


そう言って、机を指で軽く叩く。