【side蓮】
事件が解決して、数日後。
俺は、正座したまま畳の目を見つめていた。
視線を落とした先にあるのは、何年も前から見慣れてきたはずの神楽組の部屋の畳の線。
その一本一本が、まるでこれまで歩いてきた道のりを刻んでいるみたいで。
親父──創は、机の向こうで腕を組み、こちらをじっと見据えている。
その表情からは怒りも失望も読み取れない。
ただ感情の奥底を完全に伏せた、組の頭としての顔だった。
でも、その無表情が何よりも重い。
襖一枚を隔てた廊下には、複数の気配がある。
息遣いまでは聞こえないが、視線の圧だけははっきりと感じた。
おそらく組の連中だろう。
俺が「大事な話がある」と言って、親父と二人きりでこの部屋に籠もった。
それだけで何を話しているのか察しがつくほど、皆も馬鹿じゃない。
「本気で言っているのか、蓮。」
たった一言で、背筋が自然と伸びる。
「…嘘でこんなこと言うわけねぇだろ。俺は、神楽組を継ぐ気はない」
この一言を口にするまで、何年もかかった。
何度も、喉元まで出かかっては飲み込んできた言葉。
親父の前で、組の前で、言う覚悟がずっと足りなかった。
それでももう逃げない。
親父の視線を、正面から受け止める。

