そのキス、契約違反です。





「もし出来るならさ。二人で……こんな世界から離れたい」



こんな世界──裏社会、暴力や血のまみれた世界から。



「普通の人間として生きて、それで、隣に彩葉にいてほしい」



…そんな、の。

胸がいっぱいで、何も言えなくなる。



「普通の世界で。一緒に生きよう」



まるで、プロポーズみたい。

視界がじんわり滲んで、思わず笑ってしまう。



「蓮……ずるい。」

「知ってる」



そう言って笑う顔は、今までで一番優しかった。

私もつられて頬が緩む。



「…私も。蓮の…隣にいたい。彼女でいたい」



そう言うと、蓮はほっとしたみたいに目を細めた。


…私は、この人に隣にいたい。

護衛としてじゃなく、任務としてでもなく。
ただ、蓮の隣にいる女の子として。


蓮は腕の中の私を見つめたまま、私の顎に指をかけた。

顔を上げさせられて、じっと視線が絡む。


何か言われるより先に、蓮の視線が私の唇に落ちるのがわかって。

そのままゆっくり、唇が重なる。