「あ、でも。彩葉が俺を引き止めるなら行くのはやめるよ」
律は軽い調子で、こちらを見た。
「な、にそれ。」
「相棒だし、寂しがると思って」
「別に寂しくない」
即答すると、律は楽しそうに笑った。
「素直じゃないね」
……寂しくないわけがない。
ずっと相棒で、やっと再開して。
これからも当たり前みたいに一緒に仕事をしていくんだって勝手に思っていたから。
「彩葉もさ。過去のことが片付いた今、考えてみたらいいと思うよ。普通の人間として生きていく道」
病室を去る前、律は最後にそう言った。
……考えたこと、なかったな。
廊下を歩きながら私は思わず立ち止まる。
普通の人間として、生きていく道……。

