そのキス、契約違反です。





「急じゃないよ。…ありがとうなんて言葉じゃ足りないぐらい、私、律に沢山支えてもらってた。律が引き上げてくれた、律がいたから、今の私がいる。」



まっすぐに律を見る。

返しきれないぐらいの、恩をもらっていたんだ。


数年分の、感謝。



「律。私と出会ってくれて、ありがとう」



何年も一緒にいたのに、こんなふうに真っ直ぐに言うのは、初めて。


律は目を見開いて、息を吐くように笑った。



「………彩葉って、ホント…」



言いかけたまま言葉を切られて、私は思わず瞬きをする。

え、それはどういう反応…?



「俺も、彩葉には沢山感謝してる。こちらこそ、ありがとう」



そう言ってくれたけれど、律の表情にはまだ何か言い足りないような気配が残っていた。

そのまま視線を窓の外へ戻し、しばらく沈黙が落ちる。



「………彩葉、俺さ」



窓の外を見つめたまま、ぽつりと続けた。