そのキス、契約違反です。









Aegis(イージス)の医療施設は、いつも静かだ。

消毒液の匂いと機械の微かな電子音。


蓮と律は、検査のためにここへ運ばれてきたけど、薬の反動と無理な戦闘のせいで到着してすぐに揃って倒れたらしい。

命に別状はなく、検査結果にも問題はないと聞いている。


律が先に目を覚ましたと聞いて、私はそのまま彼の病室へ向かった。


ノックをすると、「どうぞ」と低い声が返ってくる。


ドアを開けると、律はベッドに寄りかかって窓の外を眺めていた。

私に気づくとゆっくりと視線を向けて、ほんの少し口元を緩める。



「おはよう」

「……おはよう」



声は少し掠れているけど、表情は穏やかだった。



「体調、大丈夫?」

「うん。俺の方は毒ではなかったからね」



軽く肩をすくめてそう言うと、律はベッド脇の棚に手を伸ばす。

そして、何かを掴んで、私の方へ差し出した。



——黒薔薇の、髪飾り。


一瞬、息が止まった。