昨夜はあまり眠れなかった。
胸の奥がずっとざわざわして、変な夢まで見た気がして……起きてもまだ頭がぼんやりしている。
階段を降りるとコーヒーの香りがふわりと鼻をくすぐって、キッチンにはカップを手にした蓮が立っていた。
「あ……おはようござ──」
「ストップ」
「……え?」
言い終える前に振り返った蓮の目は、朝なのに妙に鋭い。
眠そうなのに、圧を感じる…!
「今、“ござ”って言ったよな?」
「あ……」
そ、そうだ、敬語やめろって言われたんだった。
寝ぼけて忘れてた。
…というか細かいよ!!
「……俺昨日なんて言った?」
「敬語も“さん付け”も禁止です……」
「“です”???」
蓮がコーヒーカップを置いて、こちらにゆっくり歩いてきた。
その歩幅が妙に大きくて、あっという間に目の前まで来てしまう。
「今のは、寝ぼけてたの!」
「へぇ〜?」
ほんの数センチの距離まで近づいて、覗き込んでくる。
だ、だから距離感おかしいんだって…!
「わっ……!」
気づけば背中が壁に触れていて、完全に追い詰められていた。
蓮は逃がす気なんてゼロの顔で真正面から見下ろしてくる。

