そのキス、契約違反です。




「君が約束を守るなら」



私は頷いた。

迷いはない。


悠真は、懐から小さなケースを取り出した。



「安心して。これはちゃんとした解毒剤」



ケースの中には、小さな注射器と金属製の鍵。

……牢獄の鍵だ。



念の為解毒剤の匂いを確かめたけど、変な薬品臭はない。

私の知る限り解毒剤に使われる成分の匂いだ。

それに、ここで私を騙す意味も今はないだろう。



「……大丈夫だと思う。」



そう言うと、蓮は一瞬だけ目を伏せてから鍵と解毒剤を受け取って、自分に解毒剤を打った。



「……っ」



小さく息を詰める。

数秒後、荒れていた呼吸が少しずつ落ち着いていく。


………よかった。



「行こうか。君には最上級のおもてなしをしよう」



強引に悠真に手を引かれ、そのまま歩いていく。

一瞬振り返って、蓮を見る。



「大丈夫」



声には出さず、口の形だけで伝えた。


——必ず、戻るから。


そうして私は、地下を後にした。