そのキス、契約違反です。




今度は、ちゃんと悠真を見る。

…感情の底が見えない、静かな視線。


条件は、明確。

選択肢も、明確。


私は、一瞬だけ目を閉じた。



——自分一人の身。


——蓮。

——ここに捕まっている、何人もの命。



天秤にかけるまでもない。

……私がここで引いたら、この人達は、切り捨てられるかもしれない。



「……彩葉」



蓮が、私の服を掴む。

力は弱いけど、必死なのが伝わってくる。



「……こんなの、罠に決まってる」



蓮の声が、すぐそばでする。


……それでも。

私は、静かに立ち上がった。



「蓮には、これ以上手を出さないこと。解毒剤で今すぐ蓮を治療すること。……この条件を飲むなら、ついていく」



悠真は、少しだけ目を細めた。



「いいよ」



あっさりと。