そのキス、契約違反です。




「また、貴方なの」

「……そーいえば名乗ってなかったね。俺、黒瀬悠真(くろせゆうま)。悠真って呼んで」



悠真と名乗った男は、一歩、近づいてくる。



「安心していい。今すぐ君をどうこうする気はない」



……やっぱり。

直感は、間違ってなかった。

この男から、殺意は感じない。


けれど、だからこそ厄介だ。



「目的は取引だよ」



悠真は、檻の並ぶ空間を一瞥した。


暗がりの中、うずくまる人影。


ここで感情を出したら、負けだ。



「君一人、俺についてきてくれたら。……そうすれば、この地下にいる全員を解放するよ」



蓮が、身を起こそうとして苦しそうに息を詰める。



「……っ、やめろ……!」



咄嗟に、肩を支える。

この距離で見ると、顔色の悪さがはっきり分かる。


このまま放っておいたら。

蓮の身も危ない。