そのキス、契約違反です。




「……彩……葉……?」



ゆっくりと、まぶたが持ち上がる。

焦点の合っていない瞳が、少しずつ私を捉えていく。



「……もう、なんで、……こんな、無茶ばっかり……」



もっと自分の身を大事にしてよ……。

そう言いたかったのに、その言葉は胸の内側で絡まってうまく形にならない。



「……蓮、ごめん」



代わりに零れたのは、そんな一言だった。

蓮が、わずかに首を動かす。



「……何が……?」



意識はある。でも、明らかに無理をしている。


……私は、蓮を守るために離れたはずだった。


そばにいたら巻き込んでしまう。

危険に晒してしまう。


だから距離を取った。


それなのに、そばにいても、離れていても…蓮が傷つく可能性があるのなら。


…………なら、そばにいるしかないじゃん。



「勝手にいなくなって、ごめん……」



数秒の沈黙。

そして。


蓮はほんの少しだけ、困ったみたいに笑った。